「サポートが終わったソフトと言われても、うちのシステムは今日も現に動いてるじゃないか」——そう思ったこと、ありませんか。
あるいは、こんな話を聞いたことがあるかもしれません。「VB6(Visual Basic 6=四半世紀前に主流だった開発言語)で作ったシステムは、サポートが切れてもずっと使い続けられるらしい」「Windowsのアプリなんだから、Windowsさえあればどのパソコンでも動くだろう」。
この認識は、決しておかしな思い込みではありません。筆者が現場で会う方の大半もそうですし、半分は当たっています。VB6のシステムは、サポートが終わった今も多くの現場で現に動いています。問題は残りの半分——「動いている」ことと「安全に使い続けられる」ことは同じではなく、その差はある日とつぜん表に出ます。
この記事では、「VB6はいつまで使えるのか」という素朴な疑問にできるだけ正確に答えます。脅すためではなく、自社のシステムが今どこに立っているかを落ち着いて確かめる、地図としてお使いください。
本記事は、筆者が実際に見聞きした事例をもとにした実践編です。守秘のため、登場する組織や状況は特定につながらないよう変更・再構成しています。VB6のサポート状況そのものはMicrosoftの公式情報にもとづく事実で、出典は文末にまとめました。一方、後半で紹介する「Windows 11で動かなくなった」「延命に失敗した」という顛末は、筆者が実際の案件で体験した事実です。事実と、そこから筆者が考える提案とを、混ぜずに読み分けられるように書きました。
この記事でわかること
- 「VB6のサポート終了」には2つの意味があること——開発環境は2008年に終了、ランタイム(実行部品)は「使っているWindowsの寿命まで」継続
- 公式には「Windows 11でも動く」はずのVB6アプリが、現場では動かなくなった実話。「まだ動く」と「安全に使い続けられる」の差
- 延命・段階移行・全面移行、3つの道の費用の目安と、今日から費用ゼロでできる最初の一歩
「VB6のサポートが終わった」には、2つの意味がある
まず、混乱のもとをほどきます。「VB6のサポートが終わった」という話には、性質のまったく違う2つの層が混ざっています。
1つ目は、開発環境のサポートです。開発環境とは、プログラムを新しく作ったり、直したりするための道具のことで、IDE(Integrated Development Environment=統合開発環境)とも呼ばれます。VB6のこの開発環境のサポートは、2008年4月に終了しました。もう18年も前のことです。
Microsoftはこの点について、公式文書ではっきりこう書いています。「VB6アプリを作成・保守するためのサポートされた方法はもう存在しないため、最新技術への置き換えを強く推奨する」(筆者訳・出典は文末)。つまり、正規のやり方で直す手段は、もう存在しないということです。
2つ目は、ランタイムのサポートです。ランタイムとは、できあがったアプリを実際に動かすために必要な、土台の実行部品のことです。こちらは開発環境とは別扱いで、「サポートされているWindowsの寿命まで」面倒を見てもらえます。Microsoftの公式表でも、Windows 11やWindows Server 2025が「サポート対象」と記されています(出典は文末)。
たとえるなら、こうです。VB6アプリを一台の家電製品だとすると、開発環境は「その製品を設計・改造できる工場」、ランタイムは「その製品を動かすための電源」です。工場は2008年に閉鎖され、もう新規製造も改造もできません。でも電源は、いま使っているWindowsが現役でいる間は供給が続く。だから「動くけれど、直せない」のです。
ただし、このランタイムのサポートには、見落とされがちな但し書きが3つあります。
- 対応してもらえる範囲は限定的です。深刻な不具合や重大なセキュリティ問題(弱点)には対応しますが、通常のバグ修正や新機能の追加は対象外です
- 32ビット版のみです。64ビットのWindowsでは、WOW64(Windows 32-bit on Windows 64-bit=64ビットWindows上で32ビットのソフトを動かす互換の仕組み)という互換機能の上でしか動きません
- 他社製の追加部品は、Microsoftのサポート外です。VB6アプリの多くが使うOCX/ActiveX(アクティブエックス=画面などに後付けする部品)は作った元の会社の担当ですが、その多くはすでに廃業・製品終了しています
下の図は、「VB6のサポート」を2つの層に分け、それぞれがいつまで面倒を見てもらえるのかを示したものです。
図のとおり、あなたのVB6アプリは「動かす部品は供給されているが、直す道具はもう手に入らない」状態にあります。動くけれど、直せない——この非対称が、これから話す厄介ごとの出発点です。
「VB6はいつまで使えるのか」——答えは、動かしているWindows次第
いちばん知りたいのは、たぶんここでしょう。「で、結局いつまで使えるの?」
答えは少し拍子抜けかもしれません。VB6ランタイムそのものには、単独の期限がありません。面倒を見てもらえるのは「載せているWindowsがサポートされている間」——VB6の寿命は、その下のWindowsの寿命にぶら下がっているのです。
ここで、多くの会社に効いてくる事実があります。Windows 10のサポートは、2025年10月14日に終了しました(出典は文末)。もし御社のVB6システムが、今もWindows 10のパソコンやサーバの上で動いているなら——土台であるOS(Operating System=機器を動かす土台のソフト)のサポートは、すでに切れているということになります。
Windows 10には、ESU(Extended Security Updates=拡張セキュリティ更新プログラム)という有償の延命策があります。ただし法人で1台あたり1年目61ドル、料金は毎年およそ倍増、延長は最大3年まで。しかも中身はセキュリティ更新のみで、困ったときの相談窓口は含まれません(出典は文末)。あくまで「引っ越すまでの時間をお金で買う」仕組みです。
ですから、「VB6はいつまで使えるか」を考えるときは、VB6そのものより先に、「そのシステムは、どのWindowsの上で動いているか」を確認するのが近道です。下の図は、その確認結果ごとの現在地を整理したものです。
Windows 10で動いているなら足元のサポートはすでに切れており、Windows 11なら公式にはサポート対象——ところが、この「サポート対象」という言葉は、そのまま安心を意味しませんでした。ここから、筆者が実際に見た出来事をお話しします。
「まだ動く」と「安全に使い続けられる」は違う——Windows 11で止まったVB6アプリ
先ほどの公式情報だけを読むと、こう考えるのが自然です。「ランタイムはWindows 11でもサポートされている。なら、パソコンをWindows 11に新しくすれば、VB6アプリもそのまま動くはずだ」と。
筆者も、最初はそう考えていました。ところが、現場はその通りにはなりませんでした。
筆者が関わった、ある行政法人でのことです。Windows 10の上で問題なく動いていたVB6アプリが、Windows 11へアップグレードしたタイミングで、動かなくなってしまいました。公式には「Windows 11でもランタイムはサポート」のはずなのに、現実には正常に動かない。仕方なく、その組織はWindows 10に留まって運用を続けることを選びました。
ところが、そのWindows 10自体のサポートも、先ほど書いたとおり2025年10月に終了しました。結果として、この組織のVB6アプリは、OSごと完全にサポートが切れた状態での利用を、余儀なくされています。
なぜ、公式には「サポート対象」なのに動かないのか。公式の「サポート」が指すのは、あくまでランタイム本体だけです。ところが実際のVB6アプリは、他社製の画面部品(OCX/ActiveX)、データベースとつなぐ部品、特定のOSの設定など、周辺の部品にべったり依存しています。本体がサポート対象でも、周辺部品が新しいWindowsで揃わなければ、アプリ全体としては動かないのです。
だから、公式の「サポート対象」という言葉は、「必ず動く保証」ではありません。「まだ動く」と「安全に使い続けられる」は、まったく別のことなのです。
下の図は、その行政法人のVB6アプリがたどった経緯を、時間軸で並べたものです。
図を一言でまとめると、「新しいOSでは動かず、古いOSに留まったら、その古いOSの寿命が先に尽きた」という、逃げ場のない挟み撃ちです。
そして——これは行政法人だけの特殊な話ではありません。むしろ、社内にシステムを直せる人がいない中小企業のほうが深刻です。パソコンを新しくした翌朝、基幹システムが立ち上がらない。でも、原因を調べて直せる人が社内にも社外にもいない。OSの入れ替え一回で止まり、しかも誰も直せない——VB6を使い続けている限り、規模を問わずどの会社にも起こりうる現実です。
延命できると思った。でも、できなかった——MDACという落とし穴
先ほどの話には、続きがあります。筆者自身の、見立てが外れた話です。
その行政法人のVB6アプリを、なんとかWindows 11で動かせないか——つまり延命できないかと、筆者は考えました。当初の見立てはこうでした。「必要な環境をきちんと整えれば、Windows 11でも動くはずだ」。実際に、動くように環境を整備する作業に取りかかりました。
ところが、途中で壁にぶつかりました。MDAC(Microsoft Data Access Components=データベース接続用の部品集)まわりのインストールが、どうしても失敗することが分かったのです。これが入らないと、アプリはデータをまったく読み書きできず、業務システムとして成り立ちません。新しいWindowsでは、この古い部品集が素直には入ってくれませんでした。
この結果を受けて、筆者は延命を断念しました。そして、「正式に移行しないと、そもそも動作環境すら整えられない」と判断したのです。
ここから得た教訓を、正直に書いておきます。延命という選択肢は、机上では一番安く見えます。でも、実際に試してみるまで、成立するかどうか分からないことがあります。「とりあえず延命でしのごう」と決めても、いざ環境を作ろうとしたら肝心の部品が入らない——こういうことが、現実に起きます。
ですから、延命の費用を見積もるときは、注意が要ります。「延命できると確定してからの費用」だけでなく、「延命を試すための費用」と「それが失敗したときに移行へ切り替える費用」の両方を、あらかじめ頭に入れておくのが安全です。延命は、必ずしも安上がりの逃げ道ではないのです。
なお、延命が成立するか試す作業も、移行のために設計書を復元する作業も、どちらも「システムの中身を知っている人」がいて初めて進みます。その「あの人しかわからない」という問題そのものについては、属人化した基幹システム、担当者が倒れたら?に診断と対処をまとめています。
VB6から移行する3つの道と、費用の目安——変換・段階移行・延命
ここまでで、「動くけれど直せない」「新しいOSで動くとは限らない」「延命も試すまで分からない」という、VB6システムの現在地が見えてきたと思います。では、どうするか。大きく3つの道があります。
| 道 | 中身 | 費用の目安【仮定・一般的な目安】 | 主なリスク |
|---|---|---|---|
| A. 全面移行(作り直し・変換) | VB6全体を新しい技術へ一括で置き換える | 総額1,500万〜3,000万円 | 「正しく動くか」が本番当日までわからない |
| B. 段階移行 | 設計書を復元しつつ、業務ごとに順に移す。旧システムと並走 | 第1段階300万〜500万円、全体で計900万〜1,500万円 | 並走期間の二重運用の手間 |
| C. 延命+文書化 | 現状維持。仮想化や知識の文書化のみ | 年150万〜250万円 | 属人化・老朽化の構造は残る。そもそも延命できるとは限らない |
A・全面移行は、VB6のコードを新しい言語へまとめて変換する方法です。「変換ツールを使えば、手作業より安く速い」という話も耳にします。あるツールベンダーは「手作業での書き直しに比べ最大80%のコスト削減」と表明しています(あくまでベンダー自身が示す値です・出典は文末)。ただし、設計書もない20年物のシステムでは、変換後に「本当に正しく動くか」を検証する手間と手戻りがかさみ、総額はふくらみがちです。AI(Artificial Intelligence=人工知能)で丸ごと変換することの限界については、AIにレガシーコードを読ませたら何が起きるかで、実際にコードを解読させた結果を書いています。
B・段階移行は、AIも使って失われた設計書を復元しながら、痛みの大きい業務から順に新しい仕組みへ移していく方法です。旧システムと並走させるので、途中で失敗しても業務は止まりません。ただし設計書の復元は、中身を知るキーパーソンが在職しているうちにしかできない、期限つきの作業です。この道を実際の会社がどう選んだかは、食品卸のVB6販売管理を段階移行で立て直す提案に、判断の過程まで詳しく書いています。
C・延命は、一番安く見えます。ですが2つの弱点があります。1つは、直せる人が1人しかいない・OSが古いといった構造は何も変わらないこと。もう1つは、先ほどのMDACの話のとおり、そもそも延命できるとは限らないことです。
念のため強調しておくと、上の表の金額はすべて【仮定・一般的な目安】です。VB6の移行費用に、誰もが参照できる公的な相場表は存在しません。会社の規模・システムの複雑さ・残っている資料の量で数字は大きく動くため、「おおよその桁感」として受け取り、実際に動くときは必ず複数社の見積もりを比べてください。
「うちだけが遅れているのかも」と気に病む必要もありません。経済産業省とIPA(Information-technology Promotion Agency=情報処理推進機構)がまとめたレポートでは、レガシーシステムを抱える企業は、ユーザー企業全体の約61%、中小企業でも約5割にのぼるとされています(2025年5月・出典は文末)。ただしこれは、VB6限定ではなくレガシーシステム全般の数字です。それでも、古いシステムを抱えたまま動けずにいるのは中小企業の半分——あなたの会社だけではありません。
最初の一歩——自社のVB6アプリを棚卸しする
ここまで読んで、「では、うちは何から手を付ければいいのか」と思われたはずです。大きな決断の前に、費用ゼロでできることがあります。自社のVB6アプリが「今どこに立っているか」を確かめる棚卸しです。
同じ状況の会社の経営者に、順番だけお伝えします。
- 今日やること(費用ゼロ): そのシステムが「どのWindowsの上で動いているか」を確認する。Windows 10なら、土台のサポートはもう切れています。まずはここが、最初の一手です。
- 今月やること(費用ゼロ): そのアプリが依存している「部品」を洗い出す。他社製の画面部品(OCX/ActiveX)、MDACのようなデータベース接続の部品、特定のOSの設定——これらが新しいWindowsで揃うかどうかが、延命できるかの分かれ目です。あわせて、「その部品や、システム本体を作った会社が、今も存在するか」も確認しておきます。
- 今期やること: システムの中身を知る人が在職しているうちに、設計書の復元・文書化を始める。刷新するかどうかを決める前でも、この作業は無駄になりません。キーパーソンが在職しているうちにしかできない、期限つきの作業です。
そして、やらなくていいことを1つだけ。「まだ動いているから大丈夫」と、確認そのものを先送りにすることです。この記事でずっとお伝えしてきたとおり、動いていることは、安全の証明にはなりません。
タイトルの問い——「VB6はいつまで使えるのか」——への筆者の答えは、こうです。「載せているWindowsが現役でいる間は、動きます。ただし『動く』と『安全に使い続けられる』は別物で、新しいWindowsに移そうとした瞬間に動かなくなることも、延命しようとして部品が入らないこともあります。だから、いま出すべき答えは『いつまで使えるか』ではなく、『いつ、どう移すか』のほうです」。
慌てて大きな刷新に飛びつく必要はありません。まずは、自社のVB6アプリが立っている場所を、この記事の棚卸しで確かめてみる。それが、静かに進む老朽化への、いちばん確実で、いちばん安い第一歩です。
なお、VB6システムを実際に抱えた会社が刷新の判断を下すまでの物語は食品卸のケーススタディに、AIで古いコードから設計書を復元する実演はAIにレガシーコードを読ませたら何が起きるかに、そして「保守を頼んでいた会社のほうが撤退してしまった」という似た構図の話は保守会社が撤退したら何から始めるかにまとめています。あわせてどうぞ。
参考・出典
- Microsoft「Support Statement for Visual Basic 6.0 on Windows」(2024年12月18日更新) — VB6開発環境(IDE)のサポートは2008年4月8日に終了。ランタイムはサポート対象のWindowsの寿命まで継続し、Windows 11・Windows Server 2025も対象。ただし対応は重大な後退・重大なセキュリティ問題に限られ、32ビットのみ(64ビットではWOW64上)、他社製OCX/ActiveXはサポート対象外。https://learn.microsoft.com/en-us/previous-versions/visualstudio/visual-basic-6/visual-basic-6-support-policy
- Microsoft「Windows 10 support has ended on October 14, 2025」 — Windows 10の通常サポートは2025年10月14日に終了。https://support.microsoft.com/en-us/windows/deployment/updates-lifecycle/windows-10-support-has-ended-on-october-14-2025
- Microsoft「Extended Security Updates (ESU) program」(2025年11月17日更新) — Windows 10の有償延命(ESU)は法人1台あたり1年目61ドル、以後毎年約2倍、最大3年。技術サポートは含まれない。https://learn.microsoft.com/en-us/windows/whats-new/extended-security-updates
- Mobilize.Net「Visual Basic 6 to .NET (VBUC)」 — 「手作業での書き直しに比べ最大80%のコスト削減」はベンダー(Mobilize.Net)自身の表明値であり、独立した第三者の検証値ではない。https://learn.microsoft.com/en-us/previous-versions/visualstudio/visual-basic-6/vb6-partners-mobilize-net
- 経済産業省・IPA(情報処理推進機構)「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」(2025年5月28日) — レガシーシステムの残存はユーザー企業全体の約61%、大企業約74%、中小企業約5割。(本文で述べたとおり、これはVB6限定ではなくレガシーシステム全般の数字である点に留意)https://www.ipa.go.jp/disc/committee/begoj90000002xuk-att/legacy-system-modernization-committee-20250528-report.pdf
- 本文中の移行費用(A・B・C各案の金額)はいずれも【仮定】と明記した筆者の概算・一般的な目安であり、個別の見積もりに代わるものではありません。VB6移行の費用には権威ある公表相場が存在せず、会社の規模・システムの複雑さで大きく変わります。システム投資の判断にあたっては、複数の専門事業者への相談・相見積もりをお勧めします。
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